二風谷ワークスとチプサンケ

二風谷ワークスとチプサンケ

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第3回 二風谷ワークスとチプサンケ

私が暮らす平取町二風谷では、毎年8月に「チプサンケ」というお祭りが開催されています。

チプサンケとは、新しく作った丸木舟を初めて川に出すときの儀式のこと。二風谷では50年以上続く恒例行事となっています。

もともとアイヌの伝統社会において、川は人の移動や物流を支える非常に重要な存在でした。鮭を主食とする暮らしの中で、村は常に川の近くにあり、川は交通の要でした。丸木舟を操る技術は、日常生活に欠かせない必須の技術だったのです。

しかし明治以降、日本政府による道路や鉄道、橋の整備が進むにつれ、生活の中心は陸路へと移り、川で丸木舟を扱う機会は次第に減っていきました。

私の祖父・萱野茂の世代は、二風谷の対岸へ渡るために丸木舟を使い、操船技術を身につけていました。しかしその下の世代になると、実際に川で舟を扱う経験はどんどん失われていきます。

そうした中、今から50数年前、祖父を中心に「もう一度、川で丸木舟を扱ってみよう」と始まったのがチプサンケ祭りです。

本祭では、新造船があれば舟に魂を入れる儀式を行い、川で無事に遊べるよう祈りを捧げます。その後、地元の若者が船頭となり、地域の子どもたちや旅行者を乗せて、伝統的な丸木舟「チプ」で川下りを行います。

前夜祭では、地域の人と参加者が一緒になって宴を囲み、地元民と旅行者が垣根なく交流します。毎年このお祭りを楽しみに、何度も足を運んでくださる方も多く、年に一度ここで再会し、「元気にしていたかい」と声をかけ合う光景が生まれています。

チプサンケは、多くのファンに支えられているイベントです。地域のアイヌ関係団体と自治体が協力して運営しています。

私たち二風谷ワークスは、このイベントに参加してくれる方々に向けて、「参加した記念になるもの」を作れないかと考えました。

音楽フェスのように、その年限定のTシャツがあることで、「あの年、あの場所にいた」という記憶がモノと結びつき、より鮮明に残る。北海道でいえば、ライジングサンロックフェスティバルのように、毎年限定Tシャツを楽しみにする人がいるように。

それに倣い、私たちもチプサンケ限定Tシャツの販売を始めました。デザインは毎年変わる、その年だけの特別な一枚です。

「今年も参加したね」「また来たいね」

そんな気持ちと一緒に記憶に残る商品になり、また二風谷に帰ってきてくれる人が一人でも増えたら――そんな思いで取り組んでいます。

販売を始めたのは2023年。2026年で4年目になります。今年の8月に向けても、新しいデザインを企画中です。

また、前夜祭を運営してくれている平取アイヌ協会青年部の皆さんにもTシャツをお渡ししています。手弁当で地域のために動いてくれている方々に、少しでも「やってよかった」と思ってもらえる記念になればと願っています。

2023年デザインはすでに完売し、再販の予定はありません。2024年、2025年デザインはまだ少し在庫がありますが、こちらも在庫限りで再販予定はありません。

チプサンケという時間と、その年の記憶を身につける一枚。

今年もまた、沙流川のほとりでお会いできることを楽しみにしています。

※チプサンケ・チプの「プ」は全て小文字

チプサンケについて

チプとは「チ=我ら、オプ=乗るもの」という意味で、木の幹を削りくぼめて作った丸木舟を指します。二風谷は当時、戸数五十戸ほどの農村で、ほとんどの耕地は北海道でも屈指の水量を誇る沙流川の対岸にありました。その頃はまだ橋がかかっておらず、耕地を対岸に持つ多くの農民にとって、人や物資を運ぶためのチプは生活必需品でした。

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アイヌ工芸を次世代へ残していく

私たち二風谷ワークスは北海道の平取町二風谷で、若手職人に継続的な仕事をつくり、代々受け継がれてきたアイヌの工芸を次世代へ残すというビジョンを掲げ、2022年3月にスタートした企業です。

二風谷に残るアイヌの伝統文化を多角的な視点で取り入れ、デザインや工芸を通じて、未来に繋がる新たな価値を創造する事が私たちの使命です。

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