文化は、暮らしの中で受け継がれていく。─NIBUTANI WORKSとramguが目指していること
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前回は、「アイヌ文様に意味はあるのか」というテーマでお話ししました。
「魔除け」という考え方はあるけれど、それだけでは説明できないこと。
そして、文様は一つひとつに意味があるというより、人が「美しい」と感じ、長い時間をかけて受け継がれてきたデザインなのではないか、という話でした。
では、その文化はこれから先、どう受け継がれていくのでしょうか。
今回は、NIBUTANI WORKSとramguというブランドを立ち上げた理由について話しました。
デザインは、少しずつ変わっていく
鳥海:
前回のお話を聞いていて思ったのですが、文化ってずっと同じ形で残ってきたわけではないですよね。
文様も、少しずつ変わってきたんでしょうか。
萱野:
そう思うね。
デザインって、ゆるやかに変わっていくものなんだよ。
「これが昔からの形です」っていうものがあっても、やっぱりセンスのある人は少し崩したり個性を出したりしたくなる。
今まで誰もやっていない表現をしたくなるんだよね。
でも、その人が新しい形を作ったからといって、それだけで文化になるわけじゃない。
周りの人が「それ、いいね」と思って真似をする。
そうして少しずつ広がっていくことで、文化になっていくんじゃないかな。
鳥海:
一人の作品と、文化になるものは違うんですね。
萱野:
そう。
例えば砂澤ビッキさん。
本当にすごい彫刻家だけど、あれは「アイヌ文様」というより、「ビッキの作品」なんだよね。
もちろんアイヌ文化の中から生まれた表現なんだけど、それがそのまま伝統になるわけじゃない。
長い時間をかけて受け継がれて初めて、文化になっていくんだと思う。
文化は、文化の中から育っていく
鳥海:
少し難しい話になりますけど、アイヌではない人がアイヌ文様をアレンジしたり、新しいデザインを作ったりすることについては、どう考えていますか。
萱野:
難しい問題なんだけどね。
アイヌ語もそうだし、アイヌ文様もそうだけど、先祖たちが何世代もかけて作り上げてきた文化なんだよ。
だから、その外側にいる人が利用するということ自体、文化の盗用、泥棒になるんだよね。
もちろん誰かが勝手に描くことはできる。
でも、それはアイヌから見たら「アイヌ文様」じゃないし、それを「アイヌ文様」として商売に使うとなると、やっぱり違うかな。
文化って、その文化を持っている人たちの中で少しずつ育っていくものだと思うんだ。
鳥海:
外から変えるというより、中から少しずつ変わっていくものなんですね。
萱野:
そう。
それが文化なんじゃないかな。
博物館に残すだけでは、文化は残らない
鳥海:
ここからはブランドの話にも触れていきたいのですが、
先日、Instagramでご質問を募集したところ、「どんな思いでこのブランドを広めたいんですか?」という質問をいただきました。
萱野:
うちにはramguとNIBUTANI WORKSという二つのブランドがあるけど、それぞれ役割が違うんだよね。
ramguは、職人が木彫りや刺繍など、手仕事で作るブランド。
一番大事なのは、若い職人が仕事として続けられることなんだ。
文化を残すっていうと、博物館に作品を残すことを思い浮かべる人が多いと思う。
でも僕は、それだけじゃ文化は残らないと思ってる。
作品だけ残っても、作れる人がいなくなったら、その文化はそこで止まってしまう。
だから、本当に残さなきゃいけないのは、技術を持った人なんだよね。
その人たちが仕事をしながら技術を磨いて、次の世代へつないでいく。
ramguは、そのためのブランドなんだ。
萱野:
一方で、NIBUTANI WORKSは少し役割が違う。
昔のアイヌ文化って、特別なものじゃなかったんだよ。
着物に刺繍が入っていて、普段使う道具に彫刻が入っていて。
生活の中に文化があった。
でも今は、そういうものを見る場所が博物館になっている。
もちろん博物館は大事だけど、本来は毎日使うものだったんだよね。
だからもう一度、今の暮らしの中へ戻したい。
昔と同じ生活をするということじゃなくて、今の生活の中で自然に使える形にしていきたいと思っている。
「かっこいい」が入口でもいい
鳥海:
私も同じ思いです。
最終的なゴールとしては、私たちのブランドのファンが増えることによって、関わっていただいているアイヌの職人さんや作家さんたちに直接還元され、アイヌ文化が途絶えることなく受け継がれていくことを目指しています。
そこに辿り着くには、NIBUTANI WORKSというブランドの存在を多くの人に知ってもらい、自然に取り入れたり、身につけたりしてもらえるところまでを目指さないといけません。
その最初のきっかけとして、「アイヌ文様のかっこよさ」をもっと多くの人に気づいてもらうことが大切だと思っています。
そのために私たちは「色使い」や「アイテムの選定」にこだわっていますよね。
特にうちでも売れ筋のTシャツは、誰もが1枚は持っているアイテムだし、気軽に身に着けられるものだと思います。
もともとアイヌの衣服にも刺繍が施されていたことを考えると、すごく相性のいいアイテムですし。
最初からアイヌ文化に興味を持ってもらわなきゃいけないとは思っていません。
まずは「このTシャツ、かっこいいな」と思ってもらえたら、それで十分で
そこから、「この文様は何だろう」と興味を持ってもらえたらうれしいです。
萱野:
この前、妻がうちのTシャツを着て東京へ行ったんだ。
そうしたら、お店の人に「それ、アイヌの文様ですか?」って声をかけられたらしい。
その人は二風谷にも来たことがあって、そこから会話が始まったんだって。
Tシャツ一枚で、そんな会話が生まれるんだなと思って。
僕は、それがすごくいいなと思った。
北海道に住んでいても、知らないことがある
鳥海:
この前、友人とも話していたんですけど、海外へ旅行に行くと、その土地の歴史や文化を一生懸命調べますよね。
でも、北海道に住んでいる私たちは、意外と地元のことを知らなかったりする。
私自身もそうでした。
だからまずは地元の人たちに、「アイヌ文化って面白い」「かっこいい」と思ってもらいたい。
そのきっかけを作るのが、二風谷ワークスの商品であればいいなと思っています。
萱野:
博物館へ行く人は限られている。
本を読む人も限られている。
でも、Tシャツなら街の中で目にすることがある。
「あの模様、何だろう。」
そこから文化を知る人が一人増えるかもしれない。
僕たちは、そんなきっかけを作っていきたいんだよね。